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正義の味方と悪の手先
(箴言 10)
永原アンディ
箴言のシリーズ、しばらく中断していましたが今日から、内容的にも、形式的にも新しい部分に入ります。今日から取り上げる10章からはじまる22章までの部分は「ソロモンの箴言」と題された第二部に当たる部分です。そこには、一節を一つの箴言と数えて375の箴言が記録されています。その構成は、多少例外的な部分もありますが、ほとんどは二つの対立する事柄を並べて、私たちが良い生き方をするように勧めています。
しかし、私たちが受け取るべきことがらはそれほど単純ではなく、また表面的に受け取ると誤解する恐れもあるので、注意深く読んでゆく必要があります。そこで今回は、実際にテキストに触れながら対比のパターンを確認したり、言葉の意味を確認したりしながら、心に留めておくべきことをお話ししようと思います。
A. AかBのどちらかを選べというような簡単な話ではない
原語でも二行で構成されている一つ一つの箴言は、短く、対立する二つの事柄を並べているので一見わかりやすく感じられるかもしれませんが、そこには罠があります。
最初の一節はこうです。
1 ソロモンの箴言。知恵ある子は父を喜ばせ愚かな子は母の悲しみとなる。
確かにそうだと、大抵の人は思うでしょう。しかし、このようなことはソロモンに聞かなくてもわかりきっていることです。 最後の32節も同様です。
32 正しき者の唇は喜ばしいことを悪しき者の口は偽りを語る。
もちろん9章まで箴言を読んできた皆さんには、それが「知恵を求める」ことや「正しく生きようとする」ことの勧めであることがよくわかっていると思います。しかし、これらだけを抜き出してみると箴言というほど意味深くは思えません。
一方で次のような句があります。
3 主は正しき者の魂を飢えさせず悪しき者の欲望を退ける。
24 悪しき者の恐れていることはその身に起こり正しき者には願いどおりのことが与えられる。
27 主を畏れる人は長寿を得悪しき者の人生は短くなる。
本当にそうであるならいいけれど、実際そうなってはいないのではないかと思ってしまうような内容です。
ところで福音書を読むとイエスもまた、今日取り上げているような対立する二項を用いた箴言を語られました。思いつく箇所がありますか?今日はマタイによる福音書から三つ紹介します。
マタイの7:13,14では
「狭い門から入りなさい。滅びに至る門は大きく、その道も広い。そして、そこから入る者は多い。命に通じる門は狭く、その道も細い。そして、それを見いだす者は少ない。」
そして同じ章の17,18節では
すべて良い木は良い実を結び、悪い木は悪い実を結ぶ。
良い木が悪い実を結ぶことはなく、また、悪い木が良い実を結ぶこともできない。
とあります。また15:11では
口に入るものは人を汚さず、口から出て来るものが人を汚すのである。
とあります。
皆さんも、福音書を開いて、イエスの語られた箴言を探してみてください。
イエスの場合は、一連のコンテキストの中で語られているので、そこから私たちが実際に何を求められているのかがよくわかります。しかし、ソロモンの箴言は思いつくままに羅列されていている上に、先に紹介したように、表面的には当たり前すぎたり、理想論にしか聞こえないようなものも多いので、真意を受け取り損ねる危険があります。
箴言の伝えたい意図を正しく知るために役立つのが、どのような対となる概念を用いているのかを知ることです。少しずつ見てゆきましょう。
B. 鍵となる言葉のセット
今ここにはさまざまな世代の、また育った文化の異なる人々が集まっていますが、皆さんはスーパーヒーローといえば誰を思い浮かべるでしょうか?この答えであなたの年代がわかります。正直に自分が5〜10歳の時のヒーローを答えてください。
私が生まれたのは1950年代で、日本ではテレビ放送が始まったばかりの時代です。その時代のスーパーヒーローは「月光仮面」です。アドベンチャー・オブ・スーパーマンも輸入・放映されていましたが、スーパーマンは素顔で、異文化すぎて、子供心にも気恥ずかしく、私はなりきれなかったのです。なので、もっぱら手作りのサングラスと風呂敷のマントで東京都中野区の狭い路地を駆け回っていた月光仮面は私です。
その主題歌で「正義の味方」というフレーズは世に知られたものになりました。 基本的に、いつの時代もスーパーヒーローは「正義の味方」です。「悪」を見過ごしにはできず、戦うのです。
で、こんな話をしたのは今日の箇所で最も多く出てくる対立概念のセットが「正しい人」と「悪い人」だからなのです。10章にある32の箴言のうち11の箴言が「正しい人対悪い人」です。(3,6,7,11,16,20,24,25,28,30,32) しかし、実際のところ、私たちは「正しい」が全く当てにならないことを知っています。自分が正しいとことさらに主張する人ほどいかがわしいのです。
今も、世界中で「正しい」人が、彼らのいう「悪人」と戦っています。
それでは私たちはどのようにして真の正義を見極めることができるのでしょうか。 それは、この章にある他の対立概念を理解することが助けとなります。少し観察してゆきましょう。
まず「正しい人」に対する言葉として「悪い人」以外のものが一つだけ出てきます。それは「無知な者」です。
21 正しき者の唇は多くの人を養うが無知な者は浅はかなため死を招く。
そして、反対に「悪い人」に対する「正しい人」以外のものもあります。それは「主を畏れる人」です。
27 主を畏れる人は長寿を得悪しき者の人生は短くなる。
「正しい人ー悪い人」という対立軸のほかに、もう一つ主要な対立軸があるのですが、お分かりでしょうか。
「知恵のある人ー愚かな人」(8,14,23)です。
8 心に知恵ある人は戒めを受け入れ唇の愚かな者は滅びる。
知恵のある人のバリエーションとして、「分別のある人」(13)、「知恵のある子」(1)、「悟りを得た子(5)、「諭しを守る人」(17)、愚かな人のバリエーションとして、「愚かな子」(1)、「恥をもたらす子」(5)、そして「正しい人」と対比されていた「無知な者」(21)があります。
そのほか、勤勉な人ー怠惰な人(4)、誠実な人ー道を曲げる人(9)、悪を働く人(29)という対比がを見ることができます。
以上のことから、「正しい人」とは「神様の知恵に従って、誠実で、勤勉で、自分の口の言葉をコントロールする人」であることがわかります。一方で悪い人とは神の知恵を無視することによって、愚かで無知で怠惰であることがわかります。
C. 箴言は神様との付き合い方の秘訣
「正しい者」とは、誰かが主観的に決めるものではなく、神様と共に歩むことによって得られる知恵を働かせて、置かれているところで人々に貢献する者です。その知恵とはIQテストで測れるようなものではありません。勤勉さ、誠実さも同様に、神様に対する態度として問われているのです。
今日、確認してきたように、また前回までも時々お話ししてきたように、箴言は社会の中で成功するための処世訓なのではなく、神様に対する私たちの姿勢を問うているものです。例えば4,5節を見てください。
4 怠惰な手のひらは貧しく勤勉な手は豊かになる。
5 悟りを得た子は夏のうちに集め恥をもたらす子は刈り入れ時に居眠りをする。
これは営業チームのリーダーやスポーツチームのヘッドコーチがミーティングでメンバーを鼓舞するのに使えそうですが、それは書かれた本来の目的ではありません。
12節には、こうあります。
憎しみはいさかいを引き起こし、愛は背きのすべてを覆い隠す。
そのとおりです。「そんなことは知っています」と言いたくなるでしょう。しかしここにも知るべきことはあるのです。
それは、わかっているのに憎しみから自由になれない自分、愛において全く乏しい自分の姿です。認めたくない事実ですが、この自覚を持って初めて、私たちは私たちのつくり主に似た姿に変えられてゆくことができるのです。
私たちの主イエスは憎しみに支配されることなく、十字架の上で背きの全てを覆い隠す、完全な愛をあらわされました。私たちの現状がどうであってもそこに希望があるのです。イエスが主でいてくださる限り、私たちの前進を止められるものは誰もいないのです。
私たちができること、神様に期待されていることは、神様を愛し、神様の知恵を愛することです。
箴言は社会の中で成功するための処世訓なのではなく、神様に対する私たちの姿勢を問うものです。私たちが神様に期待されている正しさの出発点は神様を愛し、神様の知恵を愛することです。 そのことによってのみ、人々を愛すること、互いに愛し合うことが実現するのです。 神様を畏れ、神様の知恵に従い、誠実で勤勉であることこそが本当の正しさなのです。
(祈り)神様、あなたが私たちをより良く生きてゆくことができるように、私たち愛し、イエス・キリストとして私たちの主となってくださったことをありがとうございます。
私たちの生きる地域に、国に、世界にあなたの正義が現され、平和がもたらされますように。
そのために私たちがなすべきことを教えてください。
私たちを用いてください。
イエス・キリストの名によって祈ります。
要約
箴言は社会の中で成功するための処世訓なのではなく、神様に対する私たちの姿勢を問うものです。私たちが神様に期待されている正しさの出発点は神様を愛し、神様の知恵を愛することです。そのことによってのみ、人々を愛すること、互いに愛し合うことが実現するのです。神様を畏れ、神様の知恵に従い、誠実で勤勉であることこそが本当の正しさなのです。
話し合いのために
1) 今日の箴言の中で最も注目したものをあげてその理由を話しましょう
2) 「正しい人」とはどのような人ですか?
子どもたち(保護者)のために
子供達、あるいは保護者の時代のスーパーヒーローの話から正義、戦うべき真の敵とは何か考えさせてください。そして、ようやくの後半に書いたことを、子ども向けにアレンジして話してください。