永原アンディ

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あなたの旅を導く星 (マタイによる福音書 2:1-12)

讃美歌「牧人ひつじを」より

　今日はこの歌に出てくる星について、三つのことをお話しします。初めに、あなたをイエスに導く星。次にあなたの人生の旅を導く星としてのイエス。そして、あなた自身が誰かをイエスに導く星だということです。最初にテキスト全体を読みましょう。

1 イエスは、ヘロデ王の時代にユダヤのベツレヘムでお生まれになった。そのとき、占星術の学者たちが東の方からエルサレムに来て、
2 言った。「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。わたしたちは東方でその方の星を見たので、拝みに来たのです。」

3 これを聞いて、ヘロデ王は不安を抱いた。エルサレムの人々も皆、同様であった。
4 王は民の祭司長たちや律法学者たちを皆集めて、メシアはどこに生まれることになっているのかと問いただした。
5 彼らは言った。「ユダヤのベツレヘムです。預言者がこう書いています。
6 『ユダの地、ベツレヘムよ、お前はユダの指導者たちの中で決していちばん小さいものではない。お前から指導者が現れ、わたしの民イスラエルの牧者となるからである。』」
7 そこで、ヘロデは占星術の学者たちをひそかに呼び寄せ、星の現れた時期を確かめた。
8 そして、「行って、その子のことを詳しく調べ、見つかったら知らせてくれ。わたしも行って拝もう」と言ってベツレヘムへ送り出した。
9 彼らが王の言葉を聞いて出かけると、東方で見た星が先立って進み、ついに幼子のいる場所の上に止まった。
10 学者たちはその星を見て喜びにあふれた。

11 家に入ってみると、幼子は母マリアと共におられた。彼らはひれ伏して幼子を拝み、宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた。

12 ところが、「ヘロデのところへ帰るな」と夢でお告げがあったので、別の道を通って自分たちの国へ帰って行った

A. 実現した預言 (ミカ5:1, マタイ 2:6)

1) 星は異邦人を招き導く (1-2, 9-10)

もう一度1-2,9-10節を読みます

イエスは、ヘロデ王の時代にユダヤのベツレヘムでお生まれになった。そのとき、占星術の学者たちが東の方からエルサレムに来て、言った。「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。わたしたちは東方でその方の星を見たので、拝みに来たのです。」

彼らが王の言葉を聞いて出かけると、東方で見た星が先立って進み、ついに幼子のいる場所の上に止まった。学者たちはその星を見て喜びにあふれた

　ここに登場する学者たちは、イエスを単なる民族の救い主とは考えていません。もしそう考えていたなら、わざわざ外国の未来の王様に会いに来ることもなかったでしょう。しかし彼らは、外国人にとってもイエスが人生のキーパーソンとなることを予感して、星に導かれてイエスのところにやってきたのです。彼らはペルシャの人たちであったと考えられています。先週はイエスを見つけたもう一つのグループ「身分の低い羊飼いたち」のことを聞きましたが、今度はユダヤ人でもない「外国人」の登場です。このことは私たちがイエスをどのような方なのかを理解する上で大切なことを教えてくれています。

私たちは、イエスがそれまでの宗教的な枠組みに全く収まらない方だということを福音書から学んできました。同様に、国にも、民族にも収まらない方です。ですから、そのような枠組みで物を考える人にとって、イエスは受け入れがたいエイリアンでした。イエスはユダヤ教に代わる新しい宗教を始めるためにこの世界に来たのではありません。全ての人の導きの星となるために来られたのです。イエスは教会をはじめませんでした。イエスにとっては教会はご自身の体です。しかし組織としてのキリスト教会には、いつもイエスをその中に閉じ込めてしまおうとする危険があります。私たちは、誰であれイエスに出会って欲しいと願い、行動しているのであって、教会や聖書を信じること、それらに従うことを働きかけているのではありません。
キリスト教は他の宗教と同様に完璧ではありません。聖書を使って、人を差別する人は沢山います。それではどこに教会の存在する価値があるのでしょう？　それは建物としての立派さでも、プログラムの充実でも、そこにいる人々の魅力でもありません。たった一つだけ問われていること、それは「神様を愛する、互いに愛し合う、人々を愛する」共同体であるかということです。教会の存在価値はそこにあります。そうでなければ教会は人々をイエスに導く星として輝くことはできないのです。

2) ミカの預言の成就 (4-8)

王は民の祭司長たちや律法学者たちを皆集めて、メシアはどこに生まれることになっているのかと問いただした。
5 彼らは言った。「ユダヤのベツレヘムです。預言者がこう書いています。
6 『ユダの地、ベツレヘムよ、お前はユダの指導者たちの中で決していちばん小さいものではない。お前から指導者が現れ、わたしの民イスラエルの牧者となるからである。』」
7 そこで、ヘロデは占星術の学者たちをひそかに呼び寄せ、星の現れた時期を確かめた。
8 そして、「行って、その子のことを詳しく調べ、見つかったら知らせてくれ。わたしも行って拝もう」と言ってベツレヘムへ送り出した。

この部分は先週も紹介されましたが、６節はこの時から700年前の預言者ミカの預言が引用です。都であるエルサレムから南の８キロほど離れた、当時は小さな町でした。ゆっくり歩いても２時間くらいで歩ける距離です。ミカの預言も実現しようとしていたのです。ヘロデはミカの預言を知らなかったようです。学者たちの来訪とミカの預言で、ヘロデは自分の地位を脅かすものが生まれること確信したのです。
どのような時代、文化に生きていたとしても、人の心には正反対の二つの欲求が存在します。確かな人生の導き手を求める思いと、誰かに従うより自分の思い通りにしたいという思いです。イエス誕生のニュースに、占星術の学者たちは赤ちゃんのイエスに「人生の導き手」となる期待を持ち、一方ヘロデはイエスを邪魔者として抹殺したいと考えたのです。

B. イエスが星となってあなたの旅を導く

1) 権力者、権威者にとっては危険な存在 (3)

これを聞いて、ヘロデ王は不安を抱いた。エルサレムの人々も皆、同様であった。

　王の不安は、国民にも悪い影響を与えます。人々は、不安を抱いたヘロデがどんなことをするかを心配しました。状況が大きく変わることは、それが良いことであったとしても不安なものです。
イエスを知り、彼を信じて従ってゆこうとするときにも同じ不安がやってきます。無理もありません、人生最大のターニングポイントなのですから。
人生は長い旅です。その旅を正しく導く星がなければ、道に迷ってしまいます。実際の旅なら、地図とコンパスか、その両方のアプリの入ったスマートフォンがあればいいのですが、人生の旅は、魂の旅です。G-phoneもiPhoneも役には立ちません。
イエスに出会う前、人はその時々の導きに従って歩んできました。人の言葉や、自分の考えや、そのときに感じた自分の感情などです。根拠のない自信を持ったり、それを失ってがっかりしたりの繰り返しをしながら彷徨ってきたのです。
イエスを知ったあなたは、人生の旅を導く星を見つけたのです。あとは、その星を見失わずに従って歩くのです。

2) イエスにふさわしい贈り物 (11)

家に入ってみると、幼子は母マリアと共におられた。彼らはひれ伏して幼子を拝み、宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた。

　学者たちが従った星は、彼らを裏切りませんでした。その星が止まったところには、生まれたばかりのイエスがいたのです。イエスが置かれていたのは町外れの宿屋の家畜小屋の飼い葉桶の中です。全く未来の王にはふさわしくない状態でした。しかし、学者たちは本質を見誤りませんでした。王子の誕生にふさわしい贈り物を躊躇なくイエスに捧げました。　

　私たちはイエスに何をお捧げするべきでしょうか？イエスは料金を要求する観光ガイド、登山ガイドのような存在ではありません。それでは、あなたが雇い主ということになってしまいます。イエスは、ただ喜んで従ってくることを願っておられます。実はそれが最も高価な献げ物なのです。信じて従うということは、自分自身を捧げるということだからです。

C. 私たちが星となってイエスを指し示す

ところが、「ヘロデのところへ帰るな」と夢でお告げがあったので、別の道を通って自分たちの国へ帰って行った

　星に導かれてやってきた博士たちですが、帰り道には導きの星はありません。迷わずに自分の国に帰ることはできるのでしょうか？彼らは、ヘロデに言われていた通り、ヘロデにイエスの誕生を報告しに行くつもりでした。しかし、神様は彼らに夢を通して、ヘロデのところに行くべきではない事を教えられて、その計画を変更し、自分たちの国に帰って行きました。

このことはイエスに出会ってからの私たちの歩みに、良いヒントを与えてくれています。私たちは皆、確かな導きを求めて、誰かがイエスを指し示す導きの星となってくれて、イエスに出会うことができたのです。しかしイエスに出会ったら、それまでのあなたの星の役目は終わりです。イエス自身が導く星となってくださるからです。イエスに導いてくれた星は、イエスに導かれて歩む旅の仲間となりました。イエスが導きの星となったといっても、それは人の目に触れることはありません。あなたの心の目には共に行くイエスが見えていても、周りには見えないのです。しかし、その代わりにあなたが、誰かをイエスに導く星となるのです。私たちには夢のお告げがなくても、礼拝の中で、祈りの中で、聖書を読むときに沢山の歩みのヒントをいただけます。その私たちの歩みは、まだイエスを見つけていない人々の導きの星となるのです。

メッセージのポイント

イエスとの出会いはあなたの人生という旅のターニングポイントです。救いを求めてさまよう旅は、イエスとの出会いによって、いつも導きの星の見える旅となります。しかし、それだけではありません。あなた自身が、誰かがあなたの歩みを見ながら旅をしてイエスに出会う、導きの星となるのです。

話し合いのために

1) このエピソードの星は何を意味していますか？
2) ヘロデは何を恐れたのでしょう？

子供たちのために

星を見上げてもはっきりしない、夜が暗くない都会の子供達には、最初から導きの星の概念はピンとこないかもしれませんが、星とは、私たちの人生を導くものであることを伝えてください。神様が星（誰か）を用いて、私たちをイエス様に出会わせてくれること。イエス様について行くことは、はっきりと輝く星に導かれて歩くように、安全で、正しい道であること。その歩みは同時に、誰かがイエス様を見つけるための星として歩んでいることになっていることを伝えてください。