暴力の被害者は「弱い人」ではない

★このページの情報は、NPO法人レジリエンス作成オリジナル資料の一部を改変して掲載しています。文責はユアチャーチ池田にあります。文中の「☆さん」とはDVや虐待の被害者のことを指しますが、自分自身で輝く力を持っている人という意味で、敬意を込めてそう読んでいます。「Bさん」は加害者のことで、暴力を振るう人という意味の英語のバタラーの頭文字を取っています。


健全な関係と不健全な関係1(対等な立場の場合)

健全な人間関係には、お互いに対する尊重があります。

でも、DVや虐待、いじめが起こる関係には、上下関係があります。

これは、☆さんが劣っているからではなく、加害者が勝手に自分が上だと思い込んでいたり、特権意識を持っていたりすることによって起こります。

夫婦や恋人などのパートナー同士は、本来、対等にお互いを尊重し合うべき関係なので、そこに上下関係があること自体が不健全です。学校の友人同士や会社の同僚同士でのいじめも同じです。本来対等であるべき関係に上下関係があること自体が健全ではありません。


健全な関係と不健全な関係2(上下関係がある場合)

親子や、先生と生徒、上司と部下など、元々上下関係がある関係もあります。でも、お互いを尊重しあえていれば「健全な上下関係」を保つことができます。多くの場合は、上の人には下の人を守る義務があり、下の人には上の人に守られる権利があります。

でも、この場合でも、上の人が権力を握りやすく、不健全な関係になりやすいので、注意が必要です。上の人が下の人を尊重せずに権力をふるったら、虐待やパワハラになります。


不健全な関係=支配関係があること

権力は目に見えませんが、「相手と対等に話し合えるかどうか」で、感じ取ることができます。話し合うことができない、怖くて言い返せない、従うしかない、と感じるとしたら、その相手が権力を握っていることになります。

不健全な関係性の中で権力を握っている人は、下の人を自分の思い通りに支配(コントロール)しようとします。☆さんの行動を制限したり、何かをするように強制したりします。自分の思い通りに服従させようとします。

例えば、結婚後にお互いの生活習慣の違いが見えてくるのは当然のことです。それに気がついた時、健全な関係性であれば話し合って調整していくことができます。でも、片方に権力があると、権力を持つ人(加害者)は、自分の基準を世界基準にして、☆さんのやり方や意見を否定したり軽視したりします。

それが支配(コントロール)です。


暴力は支配の手段

そして、暴力は支配の一種です。支配を強化するために様々な暴力が用いられます。(殴ったり蹴ったりする身体的暴力だけでなく、精神的暴力、性暴力、経済的暴力、SNSやインターネットを使った暴力など。)

暴力は、手っ取り早く誰かを自分の思い通りに支配するために、とても効果的な方法です。相手に恐怖を植えつけて、逆らえないようにするからです。

これは、銀行強盗のことを考えると分かりやすいかもしれません。

強盗が手ぶらで銀行に行って「お金をください」と言っても相手にされません。

でも、刃物を突きつけて「金を出せ」と言えば、自分の身の安全を守るために従おうとする人が多いでしょう。

人間は誰でも、身の危険を感じたら、何とか身の安全を守ろうとします。それは私たちの本能です。「暴力」という「危険」を避けるために、相手に従うようになっていくのは、人間として自然な反応です。


ですから、世間ではよく、暴力的な相手にやり返さない(逃げない)☆さんも悪いのだと、☆さんにも責任があるかのような言い方がされますが、それは暴力の構造を分かっていないから言われていることです。☆さんは、弱いから加害者に従うのではなく、加害者に支配されることを自ら望んだのでもなく、自分の身を守るために人間として当然の行動をしているだけです。暴力を前にしたら、人間なら誰でも同じ反応をします。